第4回 大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 フロンティア技術研究室
地球温暖化防止研究グループICT研究チーム 主任研究員 吉田博之 氏 「これからは、1社だけでは出来ない事を他社と作るための仕組みづくりが
求められる。」
【略歴】
1988年 熊本大学工学部生産機械工学科卒業、同年大和ハウス工業(株)入社。
1994年 総合技術研究所設立後、スマートハウスの研究やインテリジェンストイレ等の商品開発に従事する。
工場にて自動生産ラインの導入管理業務を経て、住宅商品の開発業務を担当。
Q HEMS認証センターが出来る意味を教えて下さい。
お客様が家電製品を買う時に、様々なメーカーの製品を自由に選んでいただけることが理想です。そのためには、接続可能か否かを認証する場が必要になるため、門戸開放された認証センターが誕生する意義は大きいと考えています。
Q 認証センターが出来る以前はどのようにシステムの確認をしていたのですか?
奈良市にある当社の総合技術研究所内の実験住宅に、様々な製品を購入し、それを自社で開発したシステムにつなげて実証実験を行ってまいりました。
Q そのような企業独自の検証作業と、オープンな認証システムの違いは何ですか?
各企業の作業及びコストの負担が減ることが大きな違いです。以前は、企業ごとに通信規格が異なっていたため、各社がソフトウェアを開発する必要がありましたが、今回「ECHONET Lite」に統合されることで、ソフトウェアを一から開発する必要がなくなり、作業負担が減ります。最終的な接続テストは必要ですが、オープンな認証システムの方がより効率的な開発ができると考えます。
Q これまで共通認証のシステムを、実現できなかった理由は何でしょうか?
これまでは、そもそも家電同士を繋ぐという考え方がありませんでした。エアコンならエアコン、洗濯機なら洗濯機というように1つの製品ごとに完結していたのです。しかし、エネルギー削減や利便性の更なる追求を実現するためには、各機器だけでは解決できなくなったのです。そこで初めて繋ぐという発想が生まれたのですが、今までは繋ぐということを前提として機器を開発していなかったため、なかなか実現できなかったのではないでしょうか。
Q 今まで繋がっていなかった製品が繋がる事による、セキュリティの問題に関してはどのように取り組まれていますか?
当社は住宅メーカーなので、インターネットに繋がらないと基本的な機能、例えばお風呂にも入れないシステムは不要だと考えています。その上で、物と物が直接繋がって良いものと、繋がらない方が良いものを分けて考えています。例えば、スマートフォンは直接インターネットと繋がっても良いですが、単純で数が多い窓の開閉センサー等はコストの面も含めて検討が必要です。
また、利便性を高めると、セキュリティのリスクも高まります。今後はユーザー側が、そのリスクも含めて認識した上で、サービスを選択できる事が必要だと考えます。しかし、この部分に関しては業界内でも様々な意見があります。結論を焦るのではなく、更に議論をすべきだと考えます。
Q 最後に大和ハウス工業として目指しているものを教えて下さい。
今回の認証センターの目的は、異なる製品が繋がり、動く事の確認ですが、それだけではお客様には満足してもらえません。繋がった上で、どのようなサービスを提供するのかが重要であり、当社はその部分を開発しなければなりません。そのためには、従来の住宅関係者だけでは、発想や供給能力に限界があります。それを超えるためには、新しい業種からの参入により、全く新しい発想が生まれることを期待しています。例えば、Webサービスの企業が参加することで、住宅メーカーでは扱いにくいサービスを提供できる可能性も高まります。このように、自社だけでは出来ない事を他社と作る仕組みづくりが今後必要です。
Q 異なる企業同士がコラボレーションする仕組みづくりとは具体的にどのようなことですか?
スマートハウスやスマートコミュニティの議論に伴い、今まで繋がることが無かった企業が同じ土俵で議論を行うようになりましたが、企業文化の違いもあり、ベクトルを合わせることが大変です。例えば住宅に採用する機器は10年単位での利用を念頭に置くのに対して、家電は非常に短いサイクルでモデルチェンジされます。このようにビジネスに対するスタンスが大きく異なるというのが現状です。そのような状況で、各々の立場でお互いが個の利益を追求するだけでは、全体として噛み合いません。これからは、様々な企業がコラボレーションし、全体最適を考えながら、新しい価値を作り上げるという仕組みづくりが重要になると考えています。
インタビューへのご協力ありがとうございました。