第2回 エコーネットコンソーシアム技術委員長 村上 隆史 氏
「東日本大震災によって生まれた社会的使命が、各社が協力し市場を作る
という流れを支えている。」
村上 隆史 氏【略歴】
1999年 松下電器産業(株)(現パナソニック(株))入社。入社以来、白物家電、設備系家電、センサ系、AV家電などを対象とした様々なホームネットワークシステムに関する研究開発、標準化活動に従事。2006年 ECHONETコンソーシム 技術委員長に就任。
Q HEMS認証センターが出来る意味を教えて下さい。
これまでエコーネットコンソーシアムの規格適合認証は、自己認証という形でした。これからは、認証センターができることにより、実機を用いて第三者による検証・認証が可能になります。今までのエコーネットの認証が、自己認証で行われていた背景には、関係者がその道のプロの方々のみであり、その方々によって開発も認証も同時にされていたという事があります。しかし、これからは様々な人がこのスマートハウスに参加することになります。その時に認証センターがあることで、実機での第三者検証が可能になり、多くの方々が参加しやすくなるのです。
さらに、その認証が第3者機関であるということの意味も大きいです。それにより透明性が高まり、市場からの信頼度も高くなると期待しています。
Q しかし、今まで閉じてやってきた認証を外に出すのは大変ではないですか?
確かに、日本人同士であっても、各社それぞれの規格において、微妙な言葉遣いの違いが出るため、大変難しいことではあります。しかし、これから多種多様な会社が、スマートハウスに参加する社会を実現するためにも、これまで会社ごとの暗黙知だったものを形式知にすることに意義があるのです。しかし、その形式知化は、実際に物をつなげて検証することでしか、わからないものがあります。だからこそ、第三者による検証が、書類だけではなく実機で認証ができる、この認証センターの意味があるのです。
様々なメーカーが集まって統一の基準を作るということは大変困難なこともありますが、現在は、各社が集まりみんなで市場を作っていこうという大きな流れができており、それがとても有意義なことだと感じています。実は、過去にもまずは市場を一緒に作りましょうという流れになったことがあるのですが、結局市場を作る前に各社の競争が始まってしまいました。しかし今回は、市場を作ろうという流れが実現できており、大変大きな変化です。より良い方向に進むことを期待しています。
Q 過去は実現出来なかった「一緒になって市場を作る」ことが、なぜ今回は可能になったのでしょうか?
大きく違うのは、東日本大震災により、エネルギーの問題が大きな課題となったことで、各社が社会全体として取り組まなければならないという使命感を持っている点です。これまでは、「お客様に快適なもの・便利なものを届けよう」ということが各メーカーの大きな目標でした。しかし現在は、快適や便利さの提供はもちろんですが、その上で社会的な使命を果たそうという思いがあります。そして、このことは1社だけでは実現出来ないという認識までをも、各社が共通して持っていることが、これまでとの大きな違いです。
Q 村上さんは技術の責任者をされていますが、一般的に日本の家電は、細やかな制御を実現するために、構造が複雑になっていると言われています。その細やかさを維持しながら統一のインターフェイスでつなぐことは可能なのでしょうか?
インターフェイスの仕様に関しては、各社ともに、機器の専門家が入って定義をしています。機器を知り尽くしたプロが定義活動をしているため、出来るところや出来ないところも含めて仕様書を作っており、十分に可能になると考えています。
Q これからHEMSが広がることでのメリットを教えて下さい
メリットの一つとしてエネルギーを効果的に使えるようになるということが挙げられます。今は、計画停電や、エアコンを28度に設定するなど、「エネルギーを使わない」という流れにより、一般のユーザーに我慢を敷いている部分があります。しかし、HEMSが導入されれば、エネルギー使用量のピーク時以外で電気を貯めておいて、それをピーク時に使用するなどが可能となり、エネルギーを効率的に利用するということが出来るようになります。例えば、蓄電池と太陽光パネルをつなぎ、電気が余っているときは蓄電池に貯め、電気が逼迫し電気料金も高い時間帯に貯めていた電気を使用するなどです。このようなことは、蓄電池だけではできません。蓄電池がネットワークにつながっているからこそ実現できるのです。
これにより、「エネルギーを使わない」という流れから、「エネルギーを効果的に使う」という流れに変化すると考えています。
Q 認証センターが目指す最終ゴールを教えて下さい。
最終ゴールは、エコーネットのロゴマークがあるものは、どのメーカーのものであってもつながるのが当たり前の環境を作り、新たな市場を創出することです。だからこそ、認証センターのような情報が集まるところが大変重要です。ここに機器を持って来れば、実機同士で認証できるということは、これからの活動の大きな力になると感じています。
※HEMSとは、「home energy management system」の頭文字をとったもの。IT技術を利用してエネルギーを管理・制御するシステムのこと。電気使用の状況を可視化し、制御することを可能にする。
インタビューへのご協力ありがとうございました。