第6回 足利工業大学 学長 牛山 泉氏
これからは『連携・ネットワーク化』がキーワード。
小型風力発電とHEMSが繋がるシステムを目指して
  

 

 昨年7月からスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度(※)。
 風力エネルギーは、太陽光エネルギーとともに、現在注目されている再生可能エネルギーです。風車というと日本では大型風車のイメージが強いですが、今回、スマートハウス・HEMSとしての、身近な小型風力エネルギー活用の可能性について、風力エネルギー利用技術の専門家である牛山泉先生にお伺いました。

※:再生可能エネルギーの固定価格買取制度の説明に関してはこちら http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/index.html 


【略歴】

1942年長野市生まれ。2008年より足利工業大学学長。
上智大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。
エネルギー変換工学を専門とし、主に風力発電など再生可能
エネルギーの研究に従事。NEDO洋上風力発電委員長、
NEF風力委員長、グリーン電力認証機構委員長、などを務める。
日本風力エネルギー協会元会長、日本太陽エネルギー学会元会長・名誉理事、
日本機械学会フェロー、エネルギー・風力発電関連書籍20冊以上。
連絡先:326-8558足利市大前町268-1
(勤務先)E-mail: 

 

 



(足利工業大学内風と光の広場にて。写真左から、牛山先生、西沢先生)
足利工業大学 総合研究センター 風と光の広場
http://www2.ashitech.ac.jp/crc/square/index.html

 

■ 現在注目されている、風力エネルギー活用の専門家

Q 小型風力発電の可能性に関して教えてください。

現在、HEMS認証支援センターでは、太陽光発電、蓄電池、電気自動車等を整備されたとお伺いしました。これらの技術に関しては、日本はかなり進んでおり、一定の技術水準まで達していると感じています。これからは小型風車も増えていくと思いますので、加えていただくと嬉しいですね。

同じ自然エネルギーでも、風力の場合、これまでは大型の風車中心に技術研究がなされてきました。しかし、昨年の7月から固定価格買取制度がスタートし、小型風車の電力もかなり高い値段で買い取る(※1)ことになっています。現在は、固定価格買取制度に対応した小型風車の認証体制(※2)を整えている最中ですのでご期待ください。

※1:20kW未満の場合:57.75円/kWh

※2:風車認証の詳細に関してはこちら

http://www.classnk.or.jp/hp/ja/activities/windmill_attestation/index.html

 

Q 風力エネルギーはどのような使われ方をするのでしょうか?

風と光は相互補完の関係にあります。例えば太陽光は夜発電できないけど、風は夜でも吹く。お互いに助け合う関係です。これからは風と光をうまく活用する研究が進んでいくでしょう。
また、足利工業大学では、トリプルハイブリッドと言って、風と光に加えて、安定供給できるエネルギーを加えるシステムの研究を進めています。例えば木質バイオをガス化して発電しています。このシステムのコンセプトは欲しいときに発電出来る、ということです。木質バイオ以外にも小水力など、1つ安定的なエネルギー源を組み合わせれば再生可能エネルギーのみでの安定的な発電が実現できます。特に小水力は、日本では3万本の河川があり、年間降水量は平均1,800mmもあるんです。ヨーロッパの倍ですからね、こんな国は他にはありません。こういった小水力エネルギーは有効に使えるだろうと思います。 

 

■ 小型風車の効率化研究が進んでいる。HEMSと繋がる風車の誕生も近い?

   

(足利工業大学内の高性能小型風車の実験室にて。写真左から、牛山先生、西沢先生)

 

Q スマートハウス、HEMSとしてしての小型風力発電に関しては?

HEMSに対してどうかというと、風と光の活用が考えられると思います。ただ系統に繋げて使える風車、となると今の段階では1kWクラスだとちょっと小さい。ですので、弱い風でも回ってくれて、なおかつ出力がある程度使えるレベルで取り出せるものが必要なんですね。また、太陽光に比べて、都市部ではあまり強い風が吹かないので、基本的には不向きです。同じ都市部でも海岸縁の都市や、比較的風が強い都市部や高いビルの上などもありますので、そういった場所では使える可能性があると思います。
そこで、足利工業大学では風が弱くても効率が良い風車の研究を始めてます。分かってきたことは、大型の風車と、小型風車では最適な羽根の形状が異なるということです。
実際、風洞実験の結果(※)では風速6m/sの場合、大型風車並みの35.8%という高性能が得られました。

※研究結果の詳細に関してはこちら(別添PDF)

 

Q HEMS認証支援センタ-に小型風車を繋げたシステムを実現したいと思っています。

今後HEMS認証支援センターへ期待することを教えてください。今は『連携・ネットワーク化』が重要なキーワードになっています。再生可能エネルギーやHEMSはどの大学でもやっている、という分野ではありませんので、経験のある大学と連携・ネットワーク化していくことが大切だと思ってます。是非一緒に実現を目指しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(足利工業大学内にて 牛山先生)

 インタビューへのご協力、ありがとうございました